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よく患者さんから質問があります。「腎臓は治るのでしょうか」と。いつもうなってしまう問題です。今、腎臓病に対して、多くの要望があることは確かでしょう。
糖尿病学会のデータでは、糖尿病がある人・ない人の比較で死亡率に差があったのは腎臓病のみでした。また、イギリスでは、蛋白(たんぱく)尿があるだけで、心臓病は通常の8.5倍、死亡率も2倍というデータが出てきています。腎機能が低下することは、もはや腎臓の病気というより全身の病(脳や心臓病など)を起こしやすいと証明されてきました。
一方、治療はいかがでしょう。画期的な治療を挙げれば、「アンギオテンシンレセプター阻害剤」などの腎機能悪化を防ぐものが出てきています。また、毒素吸着薬などもあり、腎不全を遅らせる働きがあることも分かってきました。しかし、完全に治るのか、完全に悪化しないのかと言われると疑問です。
また、今は透析の分野でも、体内埋め込み型携帯式腎臓の開発、異種腎移植やクローンなどを作成してその腎臓を移植する方法などが考えられています。後者など、私個人はあまり賛成できるものではありませんが、いわゆるクローンに対する倫理的な問題が大きいとされながらも、実際にこの方法を考慮している人もいるようです。
科学が進むにつれていろいろなアイデアが生まれます。しかし、万全の医療は成り立つのでしょうか。いつも疑問に思いながら「腎臓は治るのか」の回答は、今は難しいと言わざるを得ないでしょう。しかしながら、本当の目標は腎臓を治すことなのか、もう一度考えなければいけない時代です。本来は「健康に生きる、不安なく生きる」が目標のはずです。腎臓が悪くても不安がなく生きられたら、目標を達成しているのと同じだと思います。腎臓とうまく付き合い、腎臓病を克服していくのは、こういうことだと思います。
見えない先を心配し、ストレスで腎臓を悪くすることは多々あります。患者さんも医療従事者も、最大限できることを一緒に一生懸命あたっていきたいものです。医療の進歩が多くの不安を取り除くこともありますが、不安を取り除くことで健康になるケースは意外に多いと知ることも重要だと思います。
今は良い治療がありますが、病とうまく付き合って、できる限り不安を取り除くよう、医療従事者と患者さんで少しずつ築き上げるのが近道でしょう。
次回は、「がん告知、生命倫理について、大学病院で印象に残った患者さん」をテーマにお話しする予定です。
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