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遠距離介護 遠くても心は近くに プリント メール

~ふるさとの親が老いたとき
 内閣府発行の平成19年「高齢社会白書」によると、高齢者が子どもと同居する割合は年々減少。意識調査でも「子どもと一緒に生活できるのがよい」と答える高齢者の割合は1995年の54.2%から2005年の34.8%へと低下しています。この傾向が続けば、老いた親を通いでケアしようという選択=遠距離介護は、今後も増え続けそうです。親がまだ元気という人も、読者から届いた体験記を読んで参考にしてみませんか。

●施設入所を拒む伯母に困惑 Mさん(福山市、54歳)
 私の伯母は94歳。兵庫県神戸市で一人暮らしです。戦争や震災を乗り越え、とても気の強い人です。週2回受けていた訪問介護サービスを自分で断ったため、こちらから頼んで1回だけ行ってもらっています。
 アルツハイマー型認知症と診断を受けて4年。私ができるだけ毎週、あるいは隔週に1回訪問しています。
 問題は伯母の認知症がこの1年でかなり進んだと思われること。火事を出さないか、ご近所に迷惑をかけていないか、絶えず気になります。伯母との同居や施設入所を考えましたが「ここを動かない」「誰の世話にもならない」という態度は一向に変わりません。施設入所を頑固に拒む伯母の説得に困っています。

●定期的に帰省して両親の不安を解消 Hさん(岡山市、56歳)
 1年前、兵庫県伊丹市に住む84歳の父が、腰椎(ようつい)の圧迫骨折のため緊急入院。入院中、介護保険の申請をして要介護2に認定され、退院後は介護保険を使って、廊下や浴室に手すりをつけました。今はデイサービスに週2回通い、お風呂・食事・リハビリのサービスを受けています。
 退院したときの父は、食欲もなく、おしゃべりもせず、まるで魂が抜けたみたいでしたが、最近ではこちらが冗談を言うと笑ってくれます。入院時は歩けなかった父ですが、リハビリのかいもあって今は「要支援」にまで回復しました。
 私は月2回通って、掃除や食事など家事をしています。まめに帰省することで親の変化にも気付くことができます。電話は2日に1回。携帯でメール交換もしています。たいしたことはしていませんが、定期的な帰省や連絡で、父も同居の母も安心しているようです。年を取ると何より不安が先立つようなので「離れているけど、何かあったら絶対すぐに来るから安心して」と伝えています。

離れていてもできること
ジャーナリストで「遠距離介護」という言葉の生みの親
太田差惠子さんに聞きました。


イラスト/銀杏早苗

 遠距離介護の利点は、親も子も住み慣れた地域を離れることなく、お互いの生活を激変させないで済むということ。また、時々しか会わないので、子どもにとっては、離れているときは気持ちをリセットできるというメリットもあります。

 離れて暮らしていてもできることはたくさんあります。その一つが、親の代わりに情報収集すること。例えば、ペンダント型の押しボタンを胸元にぶらさげておき、苦しくなったときにボタンを押すと消防署などに通報が届く「緊急通報システム」などは、多くの自治体で実施されていますが、高齢者には情報が届きにくいのが現状。親の住む自治体でどんなサービスがあるのか、自治体や社会福祉協議会に問い合わせてみましょう。

 遠距離介護をするとき、多くの子世代が、ホームヘルパー、民生委員、近所の人など親の住む地域の人から助けを借りることになります。特にしっかりコミュニケーションを取るべき相手が、介護サービスの組み合わせを計画してくれるケアマネジャー。今の親の状況を聞いたり話したり、心強い相談相手になってくれるはずです。

 高齢者の中には、ホームヘルパーを勧めても「まだ大丈夫だから」と断る親が多いようです。そんなときは訪問看護サービスや、他人が家の中まで入らない配食サービスなど異なる方向から勧めてみては。親世代は、医師には信頼を寄せている人が多いので、かかりつけ医から口添えしてもらうのも一案です。

 問題は、親の介護度を上げないためにも、適切なタイミングで適切なサービスを入れられるかどうか。そのためにもお盆や正月に帰省するときだけでなく、電話で連絡をとって親の状態を日ごろから把握しておくことが大切です。

 介護は先が見えない分、頑張り過ぎるとしんどくなってしまいます。仕事を辞めるなど、今までの生活をすぐに大きく変えてしまうのはお勧めではありません。ケアマネジャーを味方につけ、連れ合いや兄弟なども巻き込んで多くの人の助けを借りましょう。一人で抱え込まないことがポイントです。

太田差惠子さんのプロフィル
東京在住の介護・暮らしジャーナリスト。
NPO法人「パオッコ(離れて暮らす親のケアを考える会)」理事長。
「故郷の親が老いたとき」(中央法規)、「離れて暮らす親のケア」(七つ森書館)など著書多数。
パオッコのHP=http://paokko.org/

太田さんがアドバイス「遠距離介護を乗り切る心得11か条」
(太田差惠子著「遠距離介護」岩波ブックレットより)
1、三歩早めにスタートし、介護予防に重点を置く
2、便りのないのは元気な証拠、とは限らない
3、ふだんの親の生活パターンを知っておく
4、親の暮らす地域の各種サービスの情報収集は子どもの役目
5、ケアマネジャーや医師には積極的にコンタクト
6、親の親友、近隣の電話番号を聞いておく
7、育った時代背景が異なる親に、子どもの価値観を押しつけない
8、考えるだけでは進展なし。実行することが重要
9、兄弟姉妹、配偶者を味方につける努力を
10、世間体より親と子の笑顔が大切
11、無理は禁物。通う子どもの心と体の健康も大事

※介護サービス情報公表支援センターのHPを見ると、各都道府県の介護サービス情報を得られます
http://www.espa-shiencenter.org/preflist.html

※体験記はメール会員とリビングファンから4/15~4/23に募集しました



提供:広島リビング新聞社
(「リビングひろしま」2008年5月10日号掲載)